東野圭吾『白夜行』

白夜行 (集英社文庫)

白夜行 (集英社文庫)

ここ最近はほとんど東野作品ばかりだ。なかなか新しい作家を開拓するのは難しいので、一度当たりを見つけると(見つけたなんて形容は相応しくない超有名作家だが)とりあえずは出している本を全て読んでしまいたい。必然的に出してる作品数が半端ない東野圭吾は、時間をとるということになる。ま、面白いから読んでるんだけど。
んでこの作品だが、とにかくブ厚い。普通の小説の3倍くらいの厚さじゃないだろうか。図ったわけじゃないけど。バトルロワイヤルと同じくらいをイメージしてくれればいいと思う。だが、全然だれなかった。毎日すごく続きが読みたくなり、かなりのスピードで読んでしまった気がする。(ちなみにバトルロワイヤルは一日で読んでしまったが) その理由として考えられる構成の妙は後述するが、やはりこれは東野圭吾の文才であろう。
物語は過去の事件から始まる。大阪で問屋の主人が殺される。殺人事件として捜査をすすめるうちに容疑者が絞られていく。その主人桐原から個人的に金をもらっていた唐沢という女性と、その恋人。桐原の妻と桐原の経営する店の従業員。状況や動機から犯人は絞られていくが、どちらも決定打となる証拠が出ない。そして捜査の中刑事は、桐原の息子桐原良治と、唐沢の娘唐沢雪穂に不思議な印象を受ける。
ようやく唐沢の恋人を逮捕するという寸前で、当人は事故死をしてしまい、更に唐沢は自殺をする。捜査は打ち切られるといったところで序章は終わる。
ぶっちゃけると、この物語は桐原良治と唐沢雪穂の人生を追う物語なのだが、この二人視点で語られる描写は一つも無い。そこがこの物語の上手いところで、各年代、各視点でそれぞれ主人公が出てくるのだ。そこには何の一貫性もなくそれぞれの思いで行動していくのだが、ただ一つ共通しているのが不幸な事件が起こり、その影に桐原良治と唐沢雪穂が見えるということ。それに対する説明は一切無い。最初は話の主軸もよく見えない。徐々に時代が進み、それぞれの主人公に事件が起きる中で、それらに全て共通していることがあると、読者自身が気づかされるのだ。これがすごく上手い。自分だけが知っている気分になってしまい、心の中は「志村―!!後ろー!!」状態だ。
主人公達は裏に潜む悪意に気づかず、不幸な出来事を受け止め時代は流れていく。そんな構成だ。
一応最後には刑事さんも登場し、オチがつくのだがそこは完全にオマケであろう。(オチの評判もあまりよろしくない)この小説は繋がっていない様で繋がっている二人の人生と、それを描写する為に、各年代の時代背景を書ききった東野圭吾の手腕を堪能する作品であると思う。
蛇足

二人寄りそって生きているように見えたこの主人公達だが、結局女の方が強かったよ。というオチなのだろうか?それとも気丈に振舞うことがより一層二人の絆を表現することになるのだろうか?そこが不明瞭というか消化不良でした。でも東野作品はこういうのが多い。